2015年には『新宿スワン』『ラブ&ピース』『リアル鬼ごっこ』『映画 みんな!エスパーだよ!』と4本の新作が公開され、日本で最も多忙な映画監督となった園子温。多くのメディアで数奇な運命をたどった半生が取り上げられ、時には過激な発言が物議を呼ぶ。しかし、それは園子温の一面でしかない。本作で描かれる園子温の“いま”は、新たな映画企画の打ち合わせに忙殺されながら、アトリエで自由奔放な絵をキャンバスに描き、時にはミュージシャンとして破天荒なライブを行い、路上パフォーマンスで警察に事情聴取されながらもアーティストとして独創的な個展を開催し、自宅では妻との時間を過ごす姿だ。そして、4半世紀前に書いた脚本『ひそひそ星』の映画化を自主制作でようやく実現させようとしていた。 2014年10月、『ひそひそ星』がクランクインを迎えた。園はオリジナル脚本の設定を尊重しつつ“いま”映画にするにあたって、福島県富岡町・南相馬・浪江町でロケーションすることを選んだ。『ヒミズ』(12)『希望の国』(12)で震災、原発をいち早く描いてから4年。地元の人々の声に耳を傾け、荒涼とした風景にカメラを向ける園子温は何を思うのか。
2014年に放送された『情熱大陸/映画監督・園子温』(MBS)を演出した大島新が本作を監督。番組は大きな反響を呼んだが、テレビに収まりきらない規格外の園の魅力を描きたいという思いが、大島に『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』(2007)以来となる9年ぶりの映画を撮ることを決意させた。番組放送後の2014年9月から開始された撮影は、2015年9月までの一年にわたって続けられた。これまでテレビ、雑誌で取り上げられることもあった園の密着ドキュメンタリーとは取材期間の長さ、濃密さにおいても一線を画するものになっている。
なお、大島新は父に映画監督・大島渚を持つ。実は園も大島渚とは浅からぬ因縁を持っている。若き日の園が破壊衝動を8mmフィルムに刻みこんだ自主映画を、大島渚は「バンダリズム」(芸術、文化の破壊行為)と評して支持を表明し、いち早く園の才能を認めた。また『部屋 THE ROOM』(93)の公開時に行われた対談では、園の路上パフォーマンス「東京ガガガ」も含めてその活動に惜しみない称賛を送っている。それから23年、『部屋』の原点となる『ひそひそ星』の完成と同時に、大島新が園を主人公にした作品を撮ったのは、まさに奇縁と言えるだろう。
『ヒミズ』で初めて園作品に出演した染谷将太と二階堂ふみは、初対面の強烈な印象と園に寄せる信頼を語り、自主映画時代からつきあいのある田野邉尚人(『別冊映画秘宝』編集長)と、アーティスト活動でコラボレーションするエリイ(Chim↑Pom) は、それぞれの視点から園を語る。そして、主演作『恋の罪』(11)を経て私生活でもパートナーとなった神楽坂恵は、女優として恋人として妻としての立場から回想する。
メディアでは露悪的にふるまうこともある園だが、本作では、ふだんは見せない表情を見せる。絵を描きながら表現して生きることとは何かをエキセントリックに語るかと思えば、妻と暮らす自宅では静かな私生活をうかがわせる。『部屋 THE ROOM』をプロデュースした安岡卓治と久々に再会した園は、何をやっても上手くいかなかった“映画の神様に見捨てられた時代”の悪戦苦闘を穏やかに振り返る。そんな時代に叶わなかった夢の企画『ひそひそ星』を完成させ、園は未来に何を思うのか。
過去があって“いま”がある。長期の取材と証言で構成された本作は “園子温という生きもの”のむきだしの記録である。
1992年生まれ。東京都出身。
子役として活動を始め、『パンドラの匣』(09)で長編映画初主演。『ヒミズ』(11)で第68回ヴェネツィア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。2012年には『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』(11)、『ヒミズ』(12)、『悪の教典』(12)で映画新人賞を数多く受賞。その他の主な映画出演作は、『WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~』(14)、『寄生獣』(14)、『さよなら歌舞伎町』(15)、『寄生獣 完結編』(15)、『ストレイヤーズ・クロニクル』(15)、『映画 みんな!エスパーだよ!』(15)など。今後の待機作に『海賊とよばれた男』(16)がある。
1994年生まれ、沖縄県出身。
2009年『ガマの油』で映画デビュー。その後、『劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴りやまないっ!』(11)で映画初主演を果たし、第3回TAMA映画祭最新新進女優賞、第26回高崎映画祭最優秀助演女優賞を受賞。その後も『指輪をはめたい』(11)、ドラマ「テンペスト」(11年/NHK-BS)と続き、『ヒミズ』(12)にてヴェネチア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞受賞の快挙を果たす。以降、『王様とボク』(12)、『悪の教典』(12)、『脳男』(13)、『地獄でなぜ悪い』(13)、『四十九日のレシピ』(13)、『ほとりの朔子』(14)、『私の男』(14)、『渇き』(14)、『日々ロック』(14)、『味園ユニバース』(15)、『ジヌよさらば かむろば村へ』(15)、『この国の空』(15)などに出演。今後の待機作に、『オオカミ少女と黒王子』(16)、『ふきげんな過去』(16)、『SCOOP!』(16)などがある。
1965 年生まれ、神奈川県出身。
学生時代よりライター稼業の傍ら藤原章、園子温といった監督たちの映画製作をサポート。「現代詩手帖」編集部を経て、1995 年に町山智浩指揮のもと「映画秘宝」を立ち上げ、10年間、編集長を務める。現在、「別冊映画秘宝」編集長。その他『石井聰亙作品集DVD-BOX Ⅰ PUNK YEARS』構成協力など。
1952年生まれ、東京都出身。
映画プロデューサー。原一男監督『ゆきゆきて、神軍』(88)の助監督を経て、園子温らのインディーズ映画を数多くプロデュース。森達也監督『A』(98)、『A2』(00)で山形国際ドキュメンタリー映画祭特別賞・市民賞を受賞。プロデュース作品『LittleBird イラク戦火の家族たち』(05)がロカルノ国際映画祭人権部門最優秀賞受賞。共同監督作品『311』(11)、編集作品『遺言 原発さえなければ』(13)が山形国際ドキュメンタリー映画祭で公式上映。近年、プロデュース作品『イラク チグリスに浮かぶ平和』(14)、『赤浜ロックンロール』(15)が公開。
2005年東京にて、卯城竜太・林靖高・エリイ・岡田将孝・稲岡求・水野俊紀の当時20代の6名が、結成したアーティスト集団「Chim↑Pom」のメンバー。時代のリアルに反射神経で反応し、現代社会に全力で介入した強い社会的メッセージを持つ作品を次々と発表。映像作品を中心に、インスタレーション、パフォーマンスなど、メディアを自在に横断しながら表現している。東京をベースに活動しながら、世界中の展覧会に参加、海外でもさまざまなプロジェクトを展開。近年はさらに活動の範囲を広げ、美術専門誌監修や展覧会キュレーションなども行う。著作に『Chim↑Pomチンポム作品集』(河出書房新社、2010年)、『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』(阿部謙一との共編著、無人島プロダクション、2009年)、『芸術実行犯』(朝日出版社、2012年)がある。
1981年9月28日生まれ、岡山県出身。
2004年にグラビアアイドルとしてデビュー。その後、女優に転身し『遠くの空に消えた』(07)で映画デビュー。『プライド』(09)、『十三人の刺客』(10)などに出演。2011年に出演した園子温監督作『冷たい熱帯魚』(11)での演技が高く評価され、同作と、続く出演作『恋の罪』(11)で、第33回ヨコハマ映画祭および、おおさかシネマフェスティバル2012にて助演女優賞を受賞。その他の主な出演作には園子監督の『ヒミズ』(12)、『希望の国』(12)、『ラブ&ピース』(15)などがある。園子温監督最新作『ひそひそ星』では主演を務める傍ら、シオンプロダクションのプロデューサーとしても参加している。
1969年生まれ。
1995年早稲田大学第一文学部卒業後、フジテレビ入社。「NONFIX」「ザ・ノンフィクション」などドキュメンタリー番組のディレクターを務める。1999年フジテレビを退社。毎日放送「情熱大陸」で、『寺島しのぶ』『美輪明宏』『秋元康』『見城徹』『田中慎弥』などを演出。他にNHK「課外授業ようこそ先輩」「わたしが子どもだったころ」など。2007年ドキュメンタリー映画『シアトリカル 唐十郎と劇団唐組の記録』を監督。同作は全国15劇場で公開し、第17回日本映画批評家大賞ドキュメンタリー作品賞を受賞した。映画監督・大島渚の次男。
出演:園 子温
染谷将太 二階堂ふみ 田野邉尚人
安岡卓治 エリイ(Chim↑Pom)
神楽坂恵(園いづみ)
製作:大島 新/由里敬三
エグゼクティブプロデューサー:三好真裕美/田中 正
プロデューサー:小室直子/前田亜紀
撮影:髙橋秀典
編集:大川義弘
整音・効果:高木 創
音楽プロデュース:菊地智敦
音楽制作:RightTracks Inc./カナイ・ヒロアキ/曽根慶太/秋月須清
エンディングテーマ:「全力歯ぎしりLET’S GO!」Written by 園 子温
タイトルデザイン:薗部 健
スタジオエンジニア:大野 誠
ライン編集:野間 実
デジタルカラーグレーディング:稲川実希
デジタルシネママスタリング:深野光洋/大場広樹
ラボマネージャー:高橋幸一
ラボオペレーター:光岡 紋
ラボコーディネート:山川健太郎
制作スタッフ:高橋 佑/萩森延子/森本佳奈子
宣伝:ミラクルヴォイス 田中里美、簗詰容子、山崎 栞
宣伝プロデューサー:伊藤敦子
WEB宣伝:杉村征子
ポスター撮影:齋藤陽道
宣伝美術:川上圭三
予告編制作:小松敏和
スチール:神谷智次郎 黒田光一
船木 光 髙橋秀典
営業統括:永山雅也
配給営業:小嶋㓛一 原田大介
芝間亮佑 田中直美
末柄大輔
ライツ営業:中野則俊 長谷川学
宮前孝幸 長島志歩
海外セールス:川合絵海子 古川真実
特別協力:シオンプロダクション 船木 光
協力:「ひそひそ星」キャスト・スタッフのみなさん
ハチ公プロジェクト スタッフのみなさん
園子温個展「ひそひそ星」スタッフのみなさん
Revolution Q
奥野瑛太 長谷川大
谷本幸優 IZUMI
真野恵里菜 テンテンコ
木下理樹
園 路果
大高康典 高瀬麗子
鈴木 剛
協力:ワタリウム美術館
東宝スタジオ
ビデオユニテ
ジオ・スタッフ
日活調布撮影所
日活スタジオセンター
城西/日活ポストプロダクションセンター
資料提供:「ヒミズ」フィルムパートナーズ
「冷たい熱帯魚」製作委員会
「恋の罪」製作委員会
ぴあ
配給:日活
制作プロダクション:ネツゲン
製作:ネツゲン、日活
監督:大島 新
(C)2016「園子温という生きもの」製作委員会
監督:大島新
出演:園子温
染谷将太 二階堂ふみ 田野邉尚人 安岡卓治 エリイ(Chim↑Pom) 神楽坂恵
プロデューサー:小室直子、前田亜紀 撮影:髙橋秀典 編集:大川義弘 整音・効果:高木 創 音楽プロデュース:菊地智敦
企画・製作:ネツゲン 日活 制作プロダクション:ネツゲン 配給:日活 宣伝:ミラクルヴォイス
(C)2016「園子温という生きもの」製作委員会
(2016/日本/カラー/ビスタ/97分)