佐野元春・フィルムFilm No Damageの配信視聴方法

MVがほとんど存在しなかった時代において、1983年に日本で初めてとも言える本格的な長編ロック・ドキュメンタリー映画が制作されました。この映画の撮影監督は、日本のロック・ドキュメンタリー映画制作の先駆者である井出情児です。佐野元春が自身のドキュメンタリーを撮ってほしいと井出に直接依頼し、その結果としてこの作品が生まれました。

当時27歳だった佐野元春は、活動の拠点を日本からアメリカに移すことを考えており、自身のキャリアを客観的に捉え直す中で、自らの過去3年間のライブ活動を映像に残す決意を固めました。彼は感動したビートルズの『レット・イット・ビー』、『ウッドストック』、ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』を参考に、ドキュメンタリーとエンターテインメントの要素を併せ持つ映画を目指しました。その結果、1983年3月18日に中野サンプラザホールでのライブがフィルムに収められ、それが『Film No Damage』と名付けられました。

この作品は、音楽映像メディアが世界的に確立される以前に製作されたことで、その歴史的意義は非常に大きいです。特に、レコード会社や映画業界からの発注ではなく、ミュージシャン自らが発案した点で、映像表現の進化や後のアーカイブ構想に大きな影響を与えたとされます。佐野元春は、新しい日本語のリズムとビートの表現を提案し、その斬新なスタイルで日本のロックシーンに一石を投じました。この映画は、日本における初の本格的なビデオクリップ制作の基盤となり、広くは知られていないかもしれませんが、映像表現のパイオニアであることは間違いありません。

1983年7月には全国のホールで公開され、その後長い間フィルムの所在が不明となっていましたが、奇跡的に16mmフィルムが発見され、2013年には完全デジタルリマスター化とサウンドの再ミックスが行われました。この作品は、佐野元春を知る世代だけでなく、全世代に青春の普遍的な感動を伝える作品として再評価されています。

放送楽曲

• 悲しきレイディオ
• ガラスのジェネレーション
• グッドバイからはじめよう
• ハートビート
• スターダスト・キッズ/ソー・ヤング/
• 君をさがしている(朝が来るまで)/
• 彼女はデリケート
• ハッピーマン・メドレー
• ロックンロール・ナイト